別館:LTspiceで弛張発振

基本的な発振

考察する回路

 LEDの点滅回路のメカニズムでは、トランジスタの動作が先、コンデンサーの充電が後だった。ただこのままだと記事を執筆したオジサマ達がかわいそうなので、基本的な発振を確認してみよう。

 LEDを8Ωの抵抗器にとりかえただけのもの。

 回路は次のとおり。発振周波数がちょっと高い。


とりあえず動かす

 先のLED点灯のメカニズムでは、電圧降下を起こす部品を使っているからトランジスタが先、コンデンサが後だった。今度は派手な電圧降下はない。さっそくLEDがわりの下側の抵抗器の電圧と電流を見てみよう。

 LEDのときと異なり、電源投入直後にスパイクは発生しない。コレクタ電流が多くてもシミュレータではぶっ壊れないから大丈夫。続けてトランジスタのベース電圧と、コンデンサの両端の電圧をみてみよう。

 緑色がNPNのベース電圧、赤色がPNPの電圧、黄色(茶色?)がコンデンサの両端の電圧になっている。

 コンデンサは100kΩの抵抗器側がプラス、PNPのコレクタ側がマイナスで測定している。電源投入時コンデンサは0Vで、2.4m秒ほど時間をかけて電圧がゆっくりあがっていく。電圧が上がりきったらトランジスタONで、コンデンサも急速放電する。ししおどし的な動作だ。

 電源を入れるとコンデンサに充電し、やがてトランジスタがONという説明は、まさにこの動作である。

 LEDのときの動作とは逆だ。いやオジサマ達に言わせると、こちらがスタンダードでLEDの動作が逆なのだ。コンデンサの充電時間を速くしたり遅くすることはあるが、まさか放電時間のほうを抵抗器で設定しているとは思わなかったということだろう。

 そもそも、オジサマ達はいまさら弛張発振回路でLEDを点滅させていちいち喜ばないと考えたほうが良い。IC回路を使ったり、日用品の修理だったり。LEDが点滅する程度では喜ばない。怪しいホテルの7色に変化するシャワーヘッドなら喜ぶかもしれないが。

 結局この基本動作を知っているからLEDの点滅の記事を書くとき、コンデンサに充電してからトランジスタがONになるという固定観念があるから、変な説明をLEDの記事に書いてしまったということ。

 なおこの回路例ではコンデンサは無極性を使うのが無難だ。抵抗の数値をいろいろ変えたいだろうし。それぞれのケースで電圧の動きをよく確認しておく必要がある。


補足

 回路図で東芝の2SC1815と2SA1015を使っているが、この2つのトランジスタはこの記事を書くために設定したパラメータで、実際のものとは異なる。この記事専用のカスタムトランジスタということ。特性は限りなく似ているが。

 えっ、自分も2SC1815と2SA1015を使いたいって? 確かにそう考える方は多いはず。

 ネットで入手した2SC1815と2SA1015の設定値ではほとんどのケースで発振しないはずだ。トランジスタがONになったままとか。

 何の部品が何の値かに左右されるが、トランジスタの定義つまり、「.model」の中身を回路図中に直接書き込み、hFEつまり BF= をNPNでは200程度、PNPでは思い切って下げて 4 程度にすれば、ウソでも発振するはずだ。

 その理由を知りたい方はネットで質問すれば、帰還ゲインがどうしたこうしたと、わざとわからないように大先生が教えてくれるに違いない。ただ、だからトランジスタのこの数値をこれに変えて頂戴とは言わないはずだ(大先生は木を見て森を見ない人が多い。ゲインうんぬんの前に回路よく見ようぜ。あっLEDのときの話ね。だいたい東芝製トランジスタで実際に点滅する様子をビデオで撮影しているのに、机上の論理でこの回路は動かないと回答するし)。

 ただ、LTspiceでウソでも動くようになるが、実際にはhFE=4なんてありえないので、結局ウソだが。周波数も下がるし。


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